よぉ。『俺、えいじ』だ。

テキスト小ネタを書く、底辺芸人兼ゲーム実況師

ゲームを握って輝いていた、いつかの彼。

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「いや、別にHなシーンを見るためにエロゲーをしてるわけじゃないからな!」



と語るよしきの瞳はとても澄んでいた。ヨダレふけ。

エロゲーとはゲーム内にいかがわしいシーンがあったりするバッキバキに18禁のゲームのことである。

 

よしきとは小学校~高校時代の友人のことで、幼い頃からよく遊んでいた。

小学生の頃はしょっちゅうよしきの家のリビングでゲームをしていた。

少し後ろではふたつ年下のよしきの弟が一生懸命自分の足の親指の爪を噛んでいて、よしきのお父さんはコンロで蜂の巣から蜂の子を炙り出していた。地元の珍味である。
ボウルには炙り出された小さい幼虫みたいなのがうじゃうじゃしていて、そのとなりでは飼っている柴犬が落ちた蜂の子を拾って食っている。今思うと地獄絵図だ。

 

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蜂の子ってこんなん。


よしきは誰にでも優しくて、みんなとまんべんなく仲が良いやつだった。
そんなよしきは中学あたりからアニメ、マンガ、ゲームなどのヲタクの鱗片を見せ始め、高校時代には立派なエロゲマスターになっていた。なんなら周りにそう呼ばれていた。とてもエロゲー美少女ゲームに詳しく、専門誌(?)も熟読しているようだった。

 

高校生の頃、僕とよしきは友達5人組でよく遊んでいた。

こいけん、やすたつ、ひろと、よしき、僕という5人なのだが他のメンツについてはまた今度に書こうと思う。

よしきがエロゲーについて語るときはとても熱く、とても澄んだ目をしていた。聞かされる僕たちは鉛筆で書いたように黒い目をしていた。

そして一文目にもどるのだ。よしきは続けた。

 

「俺は全然いかがわしい気持ちでエロゲーしてないんやって。なんならプレイしているときに感動して何回も泣いたことがある。だからまったく汚れてはない。」

 

「てことはそういうときにひとりで××なことはしないってこと?」

 

「・・・・・。」

 

おい、黙るな。油汚れだお前は。

と言いつつも実際は僕たち4人もヲタクの気があるので笑って話を聞いていた。

とても熱く語ってくるので

 

「じゃあ、少し僕にも貸してくれん?」

と聞くと

「んー…すぐに返してくれるならいいよー。」

 

と少し渋った顔をした。

そして一番気に入っているという「ましろ色シンフォニー」と「WHITE ALBUM」

を貸してもらった。

結果、一回も起動すらしなかった。すまん。

 

 

 

―――月日は流れて僕たちは大学三年生になった。

 

僕は大阪の大学に通っていてひとり暮らしをしていて、よしきは名古屋の大学に通っていたため実家住まいだった。(地元は岐阜の東濃。)

 

春休みになり、僕は地元に帰るため大阪から名古屋まで高速バスに乗り、名古屋からは実家の最寄り駅まで電車で向かうという段取りだった。

しかし乗り継ぎに手間取り終電を逃してしまい、最寄りから8つくらいはなれた駅で夜中に立ち往生してしまった。

5人のグループLINEで旨を伝えると、よしきから

 

「それじゃあ、今から迎えにいくわー。」

 

と返事がきた。相変わらずいいヤツだなぁと思った。上でヒドイこと書いてごめん。ラーメンおごるわ。

よしきが車で40分くらいかけて迎えにきてくれた。

 

「やぁ。」

 

「夜遅ぉにすまんね…。」

 

と短く言葉を交わしたあと、ラーメン屋に寄ってから地元に向かった。

 

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 結論から言うと、よしきはもうあの頃のよしきではなかった。

 

車の中ではずっとBIG BANGがかかっている。おい、どうした。なんかピコピコしたアニソンのヤツ流せよ。何ガッツリ覚えてんだ。歌うな。全然ワオ、ファンタスティックベイビーじゃない。

僕はジャブのつもりでニヤニヤしながら

 

「もしリアルで二次元のキャラと付き合えるなら誰にする?」

 

という童貞力の高い質問をぶつける。しばらく悩んでいるので僕は少し安心した。趣味が少し変わっただけであの頃のよしきだ。

 

「うーん・・・・でも・・・結局、作品内にその娘の理想の男がいるからなぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

おい。おい。おい。

知ってるよ。お前の童貞力は死んだのか。

だいたいで答えとけよ。

別に俺は戦場ヶ原ひたぎとかを実際に召喚できるわけではねーよバーカ!!!

 

…彼には彼女ができていた。バイト先のひとつ年上の女性と付き合っていた。

 

地元で久しぶりにいっしょに遊んでみると美味いハンバーガーを出してくれる隠れ家的なカフェとかメッチャ知ってる。なんだコイツ。なんだこのでかいハンバーガー。インスタ映えだ。

 

「ここのハンバーガーすごい美味しいでしょ?」

 

 

 

うめぇよバカ。

 

あの頃のよしきはいなかった。

あの頃の透き通った瞳でゴリゴリの猥談を披露くれたよしきは死んだのだ。

 

借りたゲーム2本は今も僕が持っている。

でも

 

「どうなってる?」

とか

「いいかげん返せよ!」

 

とか一切言ってこない。

 

 

 

『彼』には必要ないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

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こいけんとふたりのときこの話で3時間も呑めた。